我が家に響く謎の歌

私が幼い頃、母はよく自作の歌を口ずさんでいました。
とはいってもきっちり1曲分練りに練って作ったものというわけではなく1フレーズのみ。
「●●ちゃんはーちっちゃいねー」というふうに、私や弟について独り言をこぼすような歌でした。
普段より少し高めな声に軽やかなリズム。
ぽん、ぽん、と背中を優しく叩かれながら聴いていると何だかほっとしたものです。

あれからだいぶ経ち、あの歌は“謎の歌”として思い出のひとつになっていました。

なんで母はあんな歌を歌っていたのかなと時折思い返していたのですが、ある時ピンときました。

私も気付いたら謎の歌を口ずさむようになっていたからです。

半年ほど前に我が家で飼い始めた猫をネタにして「●●ちゃーん可愛いよー」だの「●●ニャー●●ニャー」だの。
帰宅中、車を運転する時に猫に会いたいあまりひたすら名前を連呼したり、おやつをあげている最中に可愛くて仕方なかったり、ついつい口ずさんでしまいます。
きっと母もあふれる気持ちをその場で思いついたメロディーにのせて発散していたのでしょう。
少しだけ、ほんの少しだけ母の心に近づけたような気がしました。