「その日」のまえも、「その日」のあとも

「その日」のまえも、「その日」のあとも

「ページをめくるのが怖い」と ある本を読んでいて感じました。

タイトルは『その日のまえに』。

重松清さんが書かれた小説集で、余命を宣告された登場人物と その大切な人が過ごした

数日間を描いています

映画やドラマにもなっているそうなので、ご覧になった方もいらっしゃるかもしれませんね。

 

別れの日が そう遠くないと知ったら

どんな言葉で大切な人に伝えるか? どんな別れ支度をするか?

反対に、見送る側だったら どうやって受け止めるか?

「自分だったら?」と想像しますが、当然ながら答えはすぐには出ません。

 

小説でも、登場人物達のそのような心情に寄り添うように

少しずつ、ぽつりぽつりと想いが言葉になっていきます。

 

―自らの病状をいかに伝えるか悩み ちょっぴり奇抜な方法を選んだ母と、その息子の物語。

―入院中のクラスメートに贈った寄せ書きの内容を後悔していた小学生達の数十年後。

―治療を始める前に「やりなおし」の旅に出た夫婦の話。

 

言葉にすれば別れが決定的なものになってしまう気がするからこそ

読む方もページをめくるたびに怖いと感じるのでしょう。

しかし、「『その日』は必ずやってくる」と容赦ない現実を突きつけながらも

どうしていいか分からないという心の混乱に しっかり寄り添い、

なかなか踏み出せないもどかしさを そっと見守り、

打ち明けようとする勇気を応援する…。

作者の方のそんな優しい眼差しによって切り取られた登場人物達の歩みに

気づくと涙が溢れていました。

 

マコセで働く私達も、お礼状作成を通して「ご遺族様」と呼ばれる立場になってしまった

ご家族の想いに触れさせていただいています。

その中には、楽しい思い出や感謝の気持ちだけでなく

「何も恩返しできないままだった」

「生きているうちに伝えたかったのに、どうしても できなかった」という

戸惑いや悔しさがにじむものもあります。

 

私自身、祖父を亡くした時は

忙しさを理由にあまり会いに行ってあげられなかったことを許せず

「ごめんね」と泣いてばかりでした。

 

今 この仕事をしていて気づかされるのは、たとえ「その日」を迎えてしまっても

「伝えたい気持ちが込み上げてくるほど その方が故人様を想っている」という事実は

変わらないということ。

どんな言葉であれ、一生懸命 話してくださったご家族の想いをしっかりと受け取り

お礼状という「形」に残すことで

手に取った方が いつか笑顔を取り戻せるお手伝いができればと、感じています。

そして 皆さんの言葉や想いが

「その日」を迎え 人生を歩み終えた大切な方々のもとに届くことを日々願っております。

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