注:食事をしながら読むのは…あまりおすすめ出来ません(^_^;)
「もうすぐブログ当番だ、何を書こうかな」と思いながら押し入れの中を整理していたら
懐かしいものを見つけました。
数年ぶりに手にしたのは、学生時代にモンゴルへ行ったときの写真や旅行のしおりなど。
私がモンゴルに憧れるようになったのは小学校低学年頃だったか、家にあった
『スーホの白い馬』という絵本を読んでからです。草原の中を1頭の白い馬が駆ける絵を
初めて見たときから「いつか私もモンゴルの草原を馬で走る!!」と心に決めてました。
モンゴルの草原を馬で走るには、馬に乗れなきゃ!!ということで大学では馬術部に入部。
経済学部の修士でゼミのテーマに選んだのも市場経済移行後のモンゴル遊牧社会について。
机上の理論だけでなく実際に自分の目で見てみなくちゃ、と なかば理由をこじつけて
モンゴルに行こうと考えるも、いきなり一人で草原へ行くのは大変だと分かり、
NPO法人主催の”モンゴルの草原で遊牧民家族の一員となって過ごそう”という
ツアーに参加しました。
訪れたのはモンゴル中央部に近いアルハンガイ県チョロート郡ハイルハン村という所。
首都ウランバートルを年代物のロシア製バスで出発し、首都を離れるにつれ
道なき道となる中を前後左右上下(上下にもバウンドするので無防備に寝ていて
座席から転げ落ちること数回)に揺られながら1日半くらいの距離だったでしょうか。
約2週間の旅程で草原滞在の10日ほどを遊牧民のお宅で過ごしました。
お宅と言っても、テレビなどで見る直径5メートル程?の白い丸いテントのようなもの。
モンゴル語で『ゲル』と言います。
そしてもちろん、電気も水道もガスもトイレもありません。
暗くなったら寝るかローソクを灯す、水はゲルの近くの川が飲み水であり お風呂であり
子供たちの遊び場。料理はゲルにあるストーブの上に鍋をかけて調理します。
その燃料は外に落ちてる家畜のフン。ハイルハン村はヤクが多かったので主に
ヤクのフンでした。「え?」となり、次に「匂うんじゃ??」と思われるかも
しれませんが、モンゴルは超乾燥しています。なので数日もすればカラカラで
見た目は濃緑色をしたちょっと厚めのフリスビー。よく燃えます。
これぞ究極の資源のリサイクル。
主食は肉、それも羊のみ(ヤクはミルク用でした)。羊の肉を小麦の麺と炒めたり、
餃子のように包んで蒸したり。羊を解体する場も見ましたが、何というかとても
静かなものでした。最初にお腹にナイフを入れる瞬間こそギャッと叫び声をあげる
羊ですが(その時点ではまだ生きています)そこからが素早くて、お腹に手を
差し込んだかと思うと心臓に繋がる血管をつかむだかなんだかで、羊は静かに
息絶たえてました。血はほぼ出ません。大地を血で汚してはならない、そして
羊の命を人間が頂くのに最後に苦しませるということはあってはならない、
というようなことを年配の遊牧民が言っていました。
だから頂いた命は全て使いつくします。肉はもちろん、羊毛も皮も、
そして血や内臓も。血と小麦粉を混ぜたものをきれいに洗った腸につめて
ソーセージのようなものを作っていました。
羊一匹を解体するというのは遊牧民にとっても特別なことのようで
そんなにしょっちゅうはしません。解体するときは隣近所にも声をかけ(と言っても、
お隣さんは数キロ先のゲルに住んでいるのですが)皆で必ず分けあっていました。
あとはヤクのミルクから作った保存食にもするカチカチの(歯がたたないくらい固い)
チーズもありました。それを朝ごはんにと数個渡されるも、なかなか食べきれず…。
ポケットにそっと隠した食べ残しのチーズをその家の犬2匹にこっそりあげていたら
随分なつかれました。
ちなみにその犬、ヤクや羊、馬を狼から守るためにいます。ペットではないからか
名前はなく、どちらも「犬」と呼ばれてました。「家族以外にはなつかず獰猛です、
絶対に手をださないこと」と旅のしおりに書かれてましたが狼を相手にしてれば、
そりゃ獰猛にもなるってもんです。
草原での移動手段は馬かバイクが主流ですが、遊牧民のお宅を訪ねる時は馬がお勧め。
バイクより馬に跨っているほうが足の位置が高い所にあるから犬に足をかまれる
心配が少ない、って私が滞在した家のお父さんが教えてくれました。
そしてそのワンコたち、いつの間にか私のトイレタイムに付き合って
くれるようになっていました。トイレはないので気の向くまま適当に歩き
ゲルから少し離れたくぼんだ場所(草原ってまっ平でなくて意外と凹凸してます)を
探して用を足すのですが、なぜかいつも数メートル先でワンコが私の用を足すのを
待っている。で、終わるとつかず離れず、また一緒にゲルへ戻ってきます。
草原滞在中はその家の子たちがいつも私の周りをくっついて離れなかったのですが
(モンゴルの子って本当に人懐っこくて可愛いです^^)、「トイレに行く」と
言えばそのときばかりは気を利かせてくれました。
それを見て「一人きりで草原をフラフラする危なっかしい家族もどき」とでも
犬たちは思っていたのでしょうか。
わずか10日程でしたが、草原で遊牧民の暮らしにお邪魔させてもらって感じたのは
『生活』とはまさに『生きるための活動』だということ。
日本に帰って来て、川まで汲みにいかなくても蛇口をひねったら水がジャーと
出ることになんか奇妙な気分になったことを覚えています。
日本では絶対にできない体験でした。
ちなみに念願の草原を馬で走る、という夢もしっかり叶えることができました^^
というか、私が滞在したお宅では移動手段は馬しかありませんでした。
また、地平線からのぼる日の出、地平線に沈む夕日も、天然のプラネタリウムとでも
言うような満天の星も(持って行った星座早見盤、大活躍でした!)
忘れられない思い出です。
最後に、いつかモンゴルの草原に行く方のために押さえておいたら良いモンゴル語を2つ。
「ハロン オス」:お腹が心配…という方は是非。その家のお母さんが川の水を湧かしてくれます。
「ビィエ ザスィー」:用を足したくなったら。片時も離れない小さな子も気を利かせてくれます。
OP・Y