原点

この前実家へ帰ったときに、母が「ちょっとこれ見られえ」と封筒を渡してきました。

中身を出すと、綺麗な便せん、そして折りたたまれたパチンコのチラシが出てきました。

「なんこれ」と訝しげにまずチラシを開くと

なんともかわいいお絵かきが・・・。(謎の丸たちはしゃぼんだまらしい)

まだ年端もいかない私が昔描いた絵でした。

小さいとき、ポストに入っていた数々のチラシから「裏面が白いチラシ」を探して、
そこにお絵かきをしてよく遊んでいました。

次に便せんを開くと、とても達筆な字でこう書かれていました。

デザイン関係に就職されたとお母さんから聞きました。


やはり美術方面に進んだのだなあと思い、
改めてあなたが娘にプレゼントしてくれたこの絵を取り出してみました。

昔、あなたがうちのポストにこの絵を入れてくれていて、
見た時に 何とも楽しい幸せな絵だと感動しました。
いつかまたあなたのかかわったデザインの何かに出会って
感動をもらえる日もあるのではと思っています。

無邪気に楽しく描いていた頃とは違い、苦しいこともあると思いますが、応援しています。


幸せをデザインする原点はこの絵に、この頃にあるのではと、
お返しすることにしました。
がんばってね。くれぐれもお身体 大切に。

幼い頃によく遊んでいた近所の子の、お母さんからのお手紙でした。

自身は忘れていたものを誰かが「幸せな気持ちになった一枚」として覚えていて、
こんな形でそれを伝えてくれたこと。
本当に驚きでした。

絵を描いたりして遊ぶのは 物心つく頃にはすっかりやめていましたが、
こうして返してもらった絵を前にして、
「自分にはこういう原点があったんだ」ということに気付かされました。

こどもらしいへたっぴな絵と、
綺麗な文字で綴られた手紙。
ふたつの間に積み重なった記憶や時間が、私のこれまでの歩みをそのまま示しているように思えました。

 

忘れていた原体験を、思いがけず返してもらった出来事でした。
この絵を見たときの感情を、いつまでも思い起こせる自分でいたいと思います。